ちょうど一年ほど前に、移転に伴う内装デザインの
依頼を頂き、スケルトンの物件を見学したときの写真。
無機質なこの空間の中で何が出来るか、
田窪シェフのコンセプトをどうやってデザインに
反映させるかを必死で考えた。
この箱の中でどんな素材を使って、どんな装飾を
しても理想の空間になるとは思えなかったので、
一面の外壁を取り払い、外の環境を取り込むことで
空間に開放感・緑・光などが入り込み、命ある
魅力的な場所が作れると考えた。
この方向性をシェフにも共感して頂き、それを生かしつつ、
魅力的な客室、効率の良い作業動線、限られた面積を最大限
生かす合理的な間取りとするために、沢山の打ち合わせを重ね
形を生み出した。
現場が始まり、外壁が取り払われると空間が一変した!
この開口いっぱいに緑を植えて、そこに面した個室を計画。
ランチは緑いっぱいの明るい空間、
ディナーは植栽をライトアップして落ち着いた空間に。
植栽を植えると、本当にそこに命が吹き込まれる。
時間を経てここが森のようになりそれを間近に
食事が出来たらそれは気持ちがいいし、楽しいと思う。
また、沢山の種類の木を植えているので、季節によって、
花が咲いたり実がなったり、紅葉したり、新緑が美しかったり、
冬には真っ白に雪化粧することもあるだろう。
そんな自然と共にある空間こそ、旬の食材にこだわる
田窪シェフのレストランにふさわしいと思う。
シェフが実現したかったオープンキッチンのカウンター席。
キッチンとカウンター席が一体になったような空間をイメージ
されていたので、双方の空間をつなぐように黒漆喰の門型
フレームを設け境界を感じさせない一体感のある空間とした。
カウンター材はアサメラという木の一枚板。
フローリングはアメリカンチェリーの無垢材。
内装材に本物の自然素材を使うことで、シェフの素材へのこだわりと
共鳴することを目指した。
カウンター席からは、下写真の薪グリルによる調理を見て
楽しむことが出来る。
TACUBOの最大の特長であり、シェフが最も実現した
かったのがこの薪火による調理。炭火による調理は
よくありますが、薪火の調理はとても珍しく、さらに
それをオープンキッチンで見ることが出来るのは日本初。
薪火は煙が大量に出るため特別な設備が必要で、
さらに給排気にも特に気を使う必要がありましたが
専門の業者さんたちの協力のおかげで問題なく
調理できる環境を整えることが出来ました。
コストがかかり、珍しいことによるリスクがあっても
薪火特有の火加減を取り入れることで、新しく今までにない
上質を目指すシェフの姿勢は凄い!薪をどんどん使いこなし
凄い料理が生まれそうでとても楽しみ。
また薪の炎は見ているだけでとても癒される。それを眺めながら
最高の料理を食べるというシェフのアイデアもすごい!
隠れ家らしく控えめなサインをデザイン。
完成した店内の雰囲気は、竣工写真が出来次第
掲載します!